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2010年

今年2010年は、福岡と東京でのワンマンライブにアメリカツアーと、
大きなイベントがあった年でした。
今となっては、もうけっこう昔のことのように思えてなりません。
家族の結婚式や、知り合って10年近くになるだろう友人達の結婚式にも
たて続けに参加しました。
僕には西暦生年月日が全く同じという友人がいて、それを知ったときは
お互い若干照れつつも、この奇遇な間柄を喜びあったものですが、その彼も
今年めでたく結婚しました。
彼はレコーディングエンジニアをやっていて、今年はモールスの最新作の
エンジニア担当でした。

あと、僕が学生時代から使っていたギターが壊れました。
古いギターなので「いつか壊れるだろう」と思いながら使い続けて10年近くが
経ちましたが、ついにこの時が来たか、という感じです。
今年8月のアメリカツアーを終え、帰宅してケースを開けてギターを取り出すと、
3弦のペグが外れていました。
一般的なギターなら修理可能な範囲ですが、僕のはちょっと特殊なギターなので、
オリジナルの部品もおそらく無いだろうし、ネジ穴も「これ以上はもう無理」という
限界の様子なので、もう半ば諦めてます。
なので、いまだに修理にも出してませんが、FUZZペダルを使ったときに独特な音が
鳴るギターだったので封印するには惜しいので、頃合を見て信頼できる人に診て
もらおうかと思ってます。

12/28(火)@代々木ザーザズーのライブですが、渚十吾さんがゲスト参加します。
12/8に発売された渚さんの新作に、僕はコメントを書かせてもらいました。
ムーンライダーズの鈴木慶一氏のコメントも寄せられていて、僕は今年ムーンライダーズの新作「Tokyo 7」を聴きましたが、アレンジがとても面白い。御年にしていまだ斬新的。
こういうバンドが同世代でいないのが残念でもあり、ちょっと不思議でもあるところ。


では、12/28に会場で会いましょう。
来年もELEKIBASS共々どうぞよろしく。


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青色の衝撃


今年のクリスマスまでに片付けなければいけない仕事が山ほどあるが、
どうにもやる気が起きない。いいアイデアが何も浮かんでこない。
気分転換に音楽でも聴こうかと思い、CD棚に目をやる。
「G」列にはジョージ・ハリスン、グラハム・ナッシュ、グレン・グールド。
いつだったか、知り合いの宝石商の家にお邪魔したとき、彼のCD棚に
グレン・グールドの「ゴールドベルク変奏曲」が、バッハの白い石像と共に
飾られていたのを覚えている。
チェロを弾くのが趣味だった彼は、僕に「パルティータ全曲」を聴くよう
薦めてくれた。
僕は「じゃあ今度聴いてみるよ」とそのとき言ったっきりだったのを
思い出した。

忘れないように、僕はメモ帳に「パルティータ」と書いた。
そして、ふとメモ帳の隅に目をやると、「エレクトリックブルー」と走り書き
してあるのを見つけた。
それをいつ書いたのか、はたしてどういう意味なのか、なぜそれをメモをしたのか、
全く心当たりがなかった。
思い出すのが面倒になってきたので、僕はメモ帳を机の上に放り投げた。
そして気分転換に誰かに電話して会話でもしようかと思い、グレン・グールドで
ちょうど思い出したあの宝石商の電話番号を探した。
彼のオフィスに電話してみると、受付嬢が電話口に出た。
僕は彼の友人であることを伝えると、
「出張でブラジルに行っています。数ヶ月は戻りません。」
ということだった。
僕は礼を言って電話を切った。

気分転換の試みに失敗して何だかやるせない気分になり、机の上の仕事の山は
さらに僕をうんざりとさせた。
仕事するのはもうやめよう、と思った。
そして僕は、今年はブラジルでクリスマスを過ごすことに決めた。


タクシーで空港に向かい、ブラジル行きの飛行機に飛び乗り、世界地図を片手に
とにかく東へ東へと進むと、真っ青な南太西洋が僕を迎えた。南米大陸の東の端、
パライバ州の州都ジョアンペソアに辿り着いたようだった。
僕は長旅の疲れを癒すため、とりあえず目についたカフェに入り、チーズと
ハムとレタスのサンドウィッチとコーヒーを注文した。

いつぶりかの食事を終えほっと一息つき、さて、これからどこに向かおうか?
と考えた。
とりあえず、あの宝石商に会おうと思った。
隣の席に座っていた婦人に「この辺りで宝石商が行きそうな場所はあるか?」と
尋ねたところ、近くに世界中の宝石商が集まる有名な鉱山があることが分かった。
僕は婦人に礼を言い、店を出てタクシーを拾い、その鉱山に向かった。


彼は、やはりそこにいた。
鉱山の赤茶けた台地の上に青色の絨毯を敷いて、彼はチェロを弾いていた。
彼の周りには、ヴィオラ奏者とヴァイオリン奏者が2人。
演奏していたのは、「G線上のアリア」の四重奏の調べだった。

昼下がりの太陽が照りつける暑さの中、たくさんの採掘人達が四重奏の調べに
合わせ、それぞれの持ち場所をゆっくりとした動作で掘っていた。
彼は自分のソロ・パートを弾き終えると、持っていた弓で青い絨毯の近くの
場所を指し、僕にウインクした。
「ここを掘ってみろ」という意味なのか。なんとなく彼の意図をそう察した僕は
ジャケットを脱ぎ、シャツの袖を肘までまくりあげ、彼の弓が指した場所を
掘ってみることにした。

しばらく掘ってみたが、出てくるのは赤茶色の粘土質の土と小石ばかり。
長旅の疲れと照りつける太陽の陽射しが容赦なく僕の体力を奪い、額からは
汗が流れ落ちてきた。
彼ら四重奏の調べが、やみくもに掘っている僕をリラックスさせた。

僕はシャツで額の汗をぬぐいながら、さらに掘り続けた。
すると、指先にカツン、と何か固いものが当たった感触がした。
土と土の合間から、キラキラとした何かが光り輝くのが見えた。

僕は急いでその辺りの土を払い除けた。
土の中から出てきたのは、CDケースのような正方形の板状のようなもので、
無数の青色の宝石が板の全面をビッシリと覆っていた。
その宝石は、「20世紀最後の宝石」と言われる希少なトルマリンだった。
板全面を覆うほどの量は、おそらくこの鉱山が枯渇するくらいの量だろう。
それはとても鮮やかで、深い青色の輝きを放っていた。
地球の青色を全て凝縮したかのような、衝撃の青だった。


Photo_3


宝石と宝石の合間から何か文字が見えたので、僕は板を覆う宝石を全て
払い落とした。
地面には、青色の宝石が散らばった。
そこから現れたのは、グレン・グールドの「パルティータ全曲」のCDだった。
チェロのソロ・パートを弾き終えた彼は、驚いて呆気にとられている僕を見て
静かに微笑み、僕のそばにやって来てこう言った。


「誕生日おめでとう。そしてメリー・クリスマス。」


彼は再びチェロを弾き始めた。
僕は彼のそばに腰をおろした。

空を見上げると、そこには雲ひとつない真っ青なブラジルの空。
腰をおろした地面には、僕が払い落とした無数の青色のトルマリンが
キラキラと光を放ち、輝いていた。
僕は目をつむり、彼の演奏に耳を傾けた。
そして、今僕は70年代にここブラジルで活躍したバンド、ムタンチスと
同じ土地にいるんだ、という喜びもあわせて噛みしめながら、演奏を聴いた。
それはとても素敵なクリスマスだった。

Glenn Gould plays Bach

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12月28日


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