染みったれた一日
誰かの体験談やテレビの中で、よく聞いたり見たりしたことがある光景。
例えばそれが起こるのは喫茶店。
アイスコーヒーをトレイに乗せ、席を探して歩いていると床の突起物に
つまずいて転び、コーヒーをぶちまけてしまう。
さらに、近くにいた人の服にコーヒーがかかってしまう、という光景。
この場合、加害者はとにかく謝るしかない。
クリーニング代として、被害者にいくらか渡すだろう。
しかし被害者の着ていた服は、超お気に入りでとっておきの純白のドレス。
有名デザイナー作。カードで購入&完済は1年後の予定。
そんな高級純白ドレスが、コーヒーの茶色の染みで台無しに。
どうしてくれんの?これじゃあ今夜のパーティに行けないわ。
とにかく謝るしかない加害者。
すると横から、黒いスーツ、はだけた胸から見える刺青。
「いかにも」な雰囲気の男が威勢よく登場する。
「おいおい、なんてことしてくれんだ!」
平和的示談じゃ済まないだろう展開。「最悪の事態を覚悟しろ」的な空気。
さあどうする加害者?
先日、僕はサポートギターで参加するアパートメントのライブのため、吉祥寺へ。
リハーサルを終え、本番までの微妙な時間を潰すため、僕らは近くのコーヒー屋へ。
店内は満員。
僕らはコーヒーを乗せたトレイを手に、空いてる席はないかと店内を見回す。
奥の方に二人用の席を2つ見つけ、僕ら4人は二手に分かれて座ることにした。
僕らはテーブルを囲み談笑する。そしてアパートメントの新曲を聴きながら、
コーヒーを楽しんでいた。
すると、突然後ろから「ああっ!」という声と、 「ガシャーン!」という物音が。
それと同時に、僕の足元にアイスコーヒーがぶちまけられたのが目に入った。
「ああっ!すみません、すみません!」という声がする。
僕は後ろを振り返ると、トレイを持ったおっさんが慌てふためいている。
おっさん:「すみません!申し訳ない!」
僕は、まさか?もしや?と思う。
えっ、オレ?もしかしてオレの服にコーヒーかかってんの?
僕は着ていたカーディガンを脱いで確かめる。
案の定、僕の白いカーディガンには、コーヒーの茶色の染みが世界地図のように
無残に広がっている・・・。
おっさん:「洗います! すみません、洗ってきます!」
と言い残し、おっさんはどこかに消える。
やってくれたなおっさん・・・。白のカーディガンなんだけど大丈夫かな。
「洗う」 とか言ってたけど。
そんな不安を抱えつつ、僕らはアパートメントの新曲に話を戻した。
数分後、おっさんが戻って来た。
「すみません、すみません・・。洗ってきました。ほんと申し訳ない・・。」
僕は恐る恐る、カーディガンを広げてみた。
なんと、あの無残な茶色い染みは全く残っていない。
しかも洗濯が終わったばかりのような白さ。
おっさん、一体どんな洗い方したんだ?
ぶっちゃけ半ば諦めていた僕は、予想外の仕上がりに驚いた。
そして僕は被害者なんだけど、コーヒーの染みを洗い落としたおっさんに
少し感心してしまった。
おっさんは「すみません・・」とさらに謝り、財布から「クリーニング代です」と
言いテーブルに置いた。
そして彼が見つけた席へと消えていった。
僕は威勢を張るタイプの人間ではないし、おっさんにも悪気はないので、
「別にいいですよ。染みも落ちてるし。」
みたいな感じでその場は解決。
僕らはライブハウスに戻り本番を迎え、先月のレコ発よりいいライブが出来て
いい気分でこの日を終えた。
幸いにも、僕の白のカーディガンに茶色い染みは残らなかったので
僕は運が良かったのか。
それとも、コーヒーをかけてしまった相手が僕だったので、おっさんも
運が良かったのか。
でも僕はこの白のカーディガンを着るたびにこの事件とあのおっさんを
思い出すかもしれないし、あのおっさんにも何かしら小さな「傷」みたいな
染みが心に残ったかもしれない。
まあとにかく、命拾いしたな。おっさん。
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コメント
えー、コーヒーのシミってなかなか落ちないですよね・・。おじさん、どんな手を使って落としてきたんだろー。。。
すごい気になるんですけど!!
投稿 みか | 2008/06/11 00:24
洗いながら「染みよ、落ちろ!」と願をかけていたのかもしれないっすね。
または、職業がクリーニング屋さんだった、とか。
必死だったんだろうなあ、ってのは想像つきます。
投稿 kameda | 2008/06/11 13:29