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上空での夢と、地上での現実

先日の九州ツアーへと向かう飛行機の中。
羽田空港を飛びたってから30分ほど過ぎた時点で飛行機が
乱気流に突入し、その旨を伝えるパイロットのアナウンスが
機内に流れる。

予想外な揺れの影響か、パイロットの声が頼りなく聞こえたのが原因か、
機内には不安そうな声がザワザワと聞こえ出す。
その中には浮き足だった声やキャビンアテンダントに安全を確認する
おっさんの声、どこかの赤ん坊がわあわあ泣き出し、初めての飛行機で
浮かれだち、むしろこの状況を楽しんでいるかのように騒ぎ出す輩や、
その他いろいろ。

しかし僕は、前日のアパートメントのライブの疲れが残っていたせいか
うたた寝を始めていた。
飛行機の揺れはますます激しくなり、乱気流のど真ん中に突入する。
パイロットのアナウンスが、僕の意識からだんだんと遠ざかっていく・・・。


「当機は乱気流に突入します。しばしの間、皆さんご辛抱ください・・・。」


僕は毎年恒例の参勤交代に飽きあきしていて、「また今年もか・・・。」
みたいなやる気のなさで、行列の後ろの方をダラダラと歩いていた。

季節は4月の終わり頃。
空は晴れ渡り小鳥がさえずり、新緑の木々はそよ風に吹かれ、
道すがらには黄色い野花が転々と小さく咲いている。

こんな天気がいい日なのに、これから素晴らしい季節を迎えるっていうのに、
こんな日にヘロンが草原でレコーディングを始めたら、きっといい音源が
録れるだろうに。
そんなことを考えながら、僕は馬上の上司に見つからないよう
タバコを吸いながら行列の後ろの方をダラダラと歩いていた。

僕の少し前方には、鹿児島生まれの西郷隆盛が巨漢を揺らして歩いている。
彼と僕は小さい頃からの草野球仲間。ホームランを打ったり打たれたりの
良きライバル。
彼のうしろ姿は、いかにもやる気なさそうに見える。
頭をむさぼり掻いたり、大きなあくびをしたり、時々空をボ~ッと見上げてたり。

そんな西郷が何度目かの空を見上げたとき、彼は見上げたついでに僕の方へ
振り返り、パッチリとした目でウインクをした。

どうやらそれが合図だったっぽい。
「コーヒー休憩ができそうな、雰囲気のいい茶屋を探してきます!」
僕らは上司に嘘をついた。

行列を抜け出した僕らは一路、筑前へ。
僕はとんこつラーメンには興味がなく(西郷はダイエット中だった)
本場の明太子スパを堪能し、シーナ&ザ・ロケッツのライブを観ながら
本場のレモンティーを楽しんだ。

その後、僕らは北九州小倉へと向かう。
ちょうどそのとき、筑前大名の参勤交代の行列と出会った。
行列が通り過ぎるのをゆっくりと待つ僕ら。
その行列の最後尾には、横じま模様の派手な衣装を着た4人組が
「あっぷるふぃっしゅ万出井」と書いた旗を掲げてと歩いていた。
明らかに他の侍たちとは雰囲気が異なる彼ら。
彼らが僕らの前を通り過ぎるとき、西郷がウインクした。

それが合図。
彼らの地元「バードマンハウス」という小屋で恒例の、
「ビールコーヒーユーモアジョーク24」というイベントに
僕らを誘ってくれた。

そのイベントには、なぜか江戸から「逆」参勤交代してきた
Elekibassとハミリーコンプータという楽団も出演。
彼らとあっぷるふぃっしゅ万出井とのイベントは、それはそれは
大変素晴らしく、場内は歓喜に満ち溢れていた。

元服したばかりでちょんまげも初々しい青年は拳を振り上げ、
「あっぷるふぃっしゅ万出井」と彫ってあるかんざしをした3人組の
町娘はキラキラした笑顔で歌い、気難しそうなお侍さんは刀を
ギター代わりにして叫び、お百姓さんは鍬をベース代わりに踊り、
大工の棟梁さんはカンナをカンカン!と打ち鳴らし、呉服屋の
若旦那は物販席で汗をかいている。
ライブ後、西郷は「お母さんと彼女に」と、かんざしを2つ購入。

翌日、彼らは長州の「Organ‘s Melody 」という小屋に向かうと
いうことだったので、行くあてもなかった僕らは彼らと
一緒に長州へ向かうことにした。

「Organ‘s Melody 」に着いた僕ら。
店内に入ると、高杉晋作と桂小五郎が酒を飲みながら
「モデストマウスにジョニー・マーは必要だったか不要だったか?」
について熱く語っていた。
実際にそのライブを見た僕は、「必要だった」に一票。

そんな熱い議論に構わず、あっぷるふぃっしゅ万出井とElekibassと
ハミリーコンプータはステージで演奏を始める。
最初はいぶかしそうに眺めていた高杉と桂の2人。
すると人懐っこい西郷が、「一緒に踊りませんか?」とウインクする。

それが合図だったのか、または酒がいい感じでまわっていたからかは
定かじゃないが、彼らはお互いの肩を組み、輪になって踊り、
存分にライブを楽しんでいた。

その何年か後に成立した薩長同盟だが、この日がきっかけに
なったのかは定かではない。

しかしOrgan‘s Melodyの店長や、その場にいたお客さんたちによって
この日の出来事は語り草となり、今では子守唄のように、おとぎ話のように、
子孫代々ひっそりと語り継がれているという・・・。

「当機はまもなく福岡空港に着陸します。本日の福岡は快晴、気温は・・・」

キャビンアテンダントの声で、僕は目が覚めた。
僕らが乗った飛行機は、無事福岡空港に着陸。
興味が無かったとんこつラーメンは結局2杯食べ、明太子スパを食べる機会は
巡って来ず、ふらりと立ち寄った福岡の街中にある店で、革靴愛好家の僕は
コンバースのスニーカーを買った。
夢とは違う、予想外の展開。

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