パラシュートに願いを

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もし僕らの体が、重力に耐えられなかったら?
もし無重力状態で進化してたら、一体僕らはどんな姿になってただろう。
「進化はとても創造的だ。なにしろ、そのおかげでキリンがいるのだから。」
ヴォネガット(1922 - 2007)
想像力が乏しい場合、その姿は全く目に浮かばない。
明日にでも月に引っ越して、結婚し子供を作り、何代目かの孫の姿を
待つしかない。
ずっと地球にいる人達とは、きっと違った姿になることだろう。
もはや原形もとどめないくらいに。
その何代目かの孫は、僕らの姿を見て「祖先」と認めるかは謎。
果たしてその進化は正解か否か、それは神にすら分からない。
僕らが知ってる神の姿は、重力に対応した作りになっている。
つまるところ、僕らの体は重力に耐えられるよう、進化したのか。
手からリンゴが落ちないように、リンゴを持つに耐えられる指に
進化したのかも。
せっかく重力に耐えられる体に進化したにもかかわらず、
その重力に逆らおうと、人類は空を飛ぶ夢を見る。
誰よりも高くジャンプしたがったり、空中ブランコに乗って楽しんだり。
ついには重力からの開放を求め、人類は宇宙へ。
ズボンが重力に引っ張られないよう、サスペンダーという
ゴムを使い、ささやかな抵抗を試みる人もいる。
もし僕らの体の一部だけが、重力に耐えられなくなったら?
右手だけ、とか。右手がだらんと、ぶらぶら肩から垂れ下がっている状態。
左まぶただけとか。左目が常にウインクしている状態。
それは別に、誰かに対して意思表示をかけてる訳でもなく、
サインを出している訳でもない。
重力に耐えられる体に進化した体の一部が、自分の意思とは異なり
重力に耐えられなくなったら。
それは困る。せっかくここまで完璧に進化したのに。
体の一部が、意思とは異なった表現をして貰っては困る。
そんなときは、進化の歴史をメモしているであろう、DNAに苦情の電話をいれる。
「はい、対重力進化センターです。何かあなたのお力になれることは?」
「ねえちょっと、僕の左まぶたが勝手にウインクしちゃってるんですけど。
これじゃあ本も読みにくいし、いつも僕の左側に添う恋人の姿も見えないんですけど。
とても困ってます。なんとかならないっすか?」
「あら、それは大変。分かりました、早速あなたの左まぶたに注意しておきます。
進化に逆らうんじゃないと。それじゃあ進化した意味がないじゃないかと。
左目にまで迷惑をかけるんじゃないと。さもなきゃダーウィンにも告げ口するぞ、と。
キツく厳しく言っておきます。」
「よろしくお願いします。」
「お任せください。だてに何億年もかけて進化してませんからね。
私達はそんなやわじゃないですよ。どうぞご安心を。」
「ありがとう、恩にきます。」
「いつだってあなたのお力になります。しかしその右腕は、まずは接骨院へ。」
話は変わり、トクマルシューゴの最新作は、ナイスアルバム。
アコースティックギターの抜群なイントロで始まる1曲目「パラシュート」。
なすがままに、重力に身を任すことができる、大きな傘。
ウインクは自分の意思で出来ますよう、リング・ザ・ベル。
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