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ミスター、永遠に不滅

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「CHAOS AND CREATION IN THE BACKYARD」

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飲み屋さんのBGMでかかってたレコード。
ポールなんだろうな、と思いつつ店員さんに「これ、誰ですか?」
と尋ねてみると、やはり、ポール・マッカートニー。
しかも、2005年にリリースされたやつ。そういえばこのPV、見たことあるな。

Paul McCartney - Fine Line

店内でこのレコードが流れてた時間、友人の話は右から左へ、
僕はもはや聞いてるフリ。
「ポールだよなあ。でもこんな曲知らねーなあ。いい曲だなあ。昔のアルバムだろうか?」
なんてことで頭はいっぱい。
友人の話が落ち着いた隙を見計らい、「ちょっとゴメン」と席を立ち、
店員さんのところへ。

僕は手渡されたレコードをしげしげ。すると、もう一人の友人もやってきた。
たぶん、同じこと考えてたんだろうね。
僕らはテーブルに戻り、残された友人に 「これ、ポール・マッカートニーだって!」
と教えてあげた。
「ふ~ん。」と彼女も耳を傾ける。


つーか、とうに還暦を過ぎたおじいちゃんじゃねえか!
いつまでMr.POPSでいる気なんだ。
30歳以上年が離れた人が、いまだ現役で作った音楽に、魅了される僕。
音楽的介護が必要なのは誰だ?

おじいちゃんといえども、彼はポール・マッカートニー。
ミック・ジャガーの腹筋も割れている。

Paul McCartney - English Tea


きのうは徳永憲の弾き語りライブを見る。
全20曲、1時間半くらい。曲数と演奏時間を終わってから聞いて、ビックリした。
えっ、そんなにやってたの?あと2、3曲聞きたかった気分。

ライブはねえ、うん、いやあ、すげーよかった。
僕が今までに見た徳永さんのライブの中で、トップ3に入るな。
彼の曲をじっくり、たくさん、ゆったりした雰囲気の中で聞けたのも、よかったのかも。

彼のペースで、1曲、1曲。ときおり解説を加えながら歌っていく。
新作のアルバムに収録予定の曲から、10年前の古い曲まで。
弾き語り形式という、余計なものは一切ないサウンドの中、やはり歌詞が
耳に入ってくる。
メロディはもちろんいいんだけど、歌詞が一節、一節、面白い。
やけに心にのこるフレーズ。
さすが、「弾き語る」だけある。

「裸のステラ」がいい。
曲中の最高潮を迎える部分で、歌詞中でいちばん印象的な言葉が乗っかってくる。
ああ、新作が待ち遠しい。

ちなみに僕は、ポールの歌詞はよく知りません。
歌詞カードをまじまじ眺めながら彼の曲を聞いて、物思いにふけった覚えは無い。
と言ってしまうと、「ポールいいねえ!」という僕に説得力はゼロで、
ポールのアーティスト的意向に反しているのかも。
だからイギリス人、アメリカ人の方が、僕よりポールを楽しめるんだろうね。
僕が外国人より、徳永さんを楽しめるように。

まあいいじゃん、メロディだけで感動しても。
いくら歌詞がよくても曲がつまんなけりゃ、その人はギターをおいて詩人になるべきだ。
と、ぼくは強引にSaid。

「自分のメロディ」ってものを持ってる人は、やっぱいいね。
そんじょそこらの他とは違う、その人独特のメロディ。
そういうものを持ってる人は、強い。そんでいつまでも残る。

しかし、「君だけのメロディだ!」と認められるかどうかは、
聞く人の個性に依存する。

たしか、スタバでポールの新作売ってたよね?
今度買ってみよう。

Ken Tokunaga - ガールズ・フェスティバル

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Ring the Bell ! 編

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So it goes。
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キャスパーとのツアーが終わった翌日、唇にヘルペスが出来た。
風邪を引く前、風邪を引いた後など、体が弱っているときに出来やすい。
体からの警告サインである厄介な吹き出もの、ヘルペス。
あのツアーで特に疲れる立場じゃなかった僕だが、なんだろう、単に睡眠不足?
塗り薬を処方して貰った。
早く治りますようリング・ザ・ベル。

先日知り合った、オーストラリア出身のセーラ。
こないだのwith キャスパーツアー at Club QUEにも来てくれて、とても楽しんでくれた様子。
Eleki の曲「オーストラリア」は、彼女にも好評だったよう。
その彼女が日本を去るということで、お別れ会に参加してきた。
中国からロシアに渡り、ついでにモンゴルにも立ち寄ってスペインにも行き、その後
日本に寄ってからオーストラリアかアメリカに行く予定だ、って言ってた。
いい旅をリング・ザ・ベル。

「私はとてもラッキーなの。」
と、セーラSaid。
「なんで?」と聞くと、「友達がそこにいるから。」とのこと。
なるほどね。僕らもアメリカに友達がいるから、ツアーが出来たっていうのもあるしね。
「Elekibassはオーストラリアに来ないの? そんときは私がオーガナイズするわ!」
サンキューリング・ザ・ベル。

「件名:叔父さんだよ」
というメールが母から届いた。
叔父さんからの転送メール?と思いきや、それは妹が妊娠したとの報告メールでした。
無事生まれるようリング・ザ・ベル。

先日人間ドックに行ったところ、「肝機能障害です」との結果が。
酒を飲まないオレがなぜ?と思ったが、いちばん信頼できる人に聞いたところ、
まあ、特に問題なさそう。別件で服用してる薬の影響が検査に引っかかったっぽい。
その他は全く問題なしのAクラス。ちなみに視力は1.2。
レッツキープGood Eyesight リング・ザ・ベル。

ニューヨークはセントラルパークの宿無しも、新宿駅西口の托鉢僧も、
彼の帽子かお鉢にコインを投げれば、チリリーン、と鐘を鳴らしてくれる。
「あなたにも、神のご加護を!」的。

清水寺に行ったとき、僕はコインを投げて自ら鐘を鳴らした。
あなたにも、何かしらのご加護をリング・ザベル。
って願うほど、僕の心に余裕はない。
これからも精進しますリング・ザ・ベル。

キャスパーファンダンゴこと、ジェイソン・ネスミスのブログを追加しました。
素敵な音楽に出会えますよう、ご覧あそばせリング・ザ・ベル。

キャスパー&ザ クッキーズ「The Optimist's club」に収録されている
「Sid from the Central Park」の直前に、「Ring the Bell !」と鐘を鳴らしてくれる
男の声が。
この曲を聞きながら何か願いごとをすると、叶うといいねリング・ザ・ベル。
コインの代わりに、CD再生ボタンでオッケー。


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ツアー後記「Rock this town !」 編

今朝、キャスパー達はアメリカへ帰国しました。
名古屋行きの新幹線が発車するまで、あと5分!急げ!
別れのハグもそこそこに、彼らはホームへとダッシュ。
まだ飛行機の中かな?そろそろ着いてもいい頃かもしれない。

7日は日本のディープなブルースマンに囲まれた夜を過ごして、
8日の渋谷O-nestは、ツアー初日にふさわしい演奏と盛り上がり。
2回目のアンコールが起きたときの客席の雰囲気は、「もっと聞きたい、観たい!」って
空気で溢れてた気がしたな。オレがそう思ってたからかな?

ライブ後に会った僕の友人は、会うなりいきなり僕を抱き上げ、僕はグルグル、
グルグルと回されました。
基本的にテンションが高い彼だが、この日は今まで見たことない位に高かった。
彼、ステージ前方ですげー踊ってたしね。
キャスパー達にも、その言葉にならない、溢れ出て止まらない興奮をぶつけてた。
その感情は、僕らに相当伝わりました。

9日の京都磔磔は、突然の降雪のため高速道路は大渋滞、結局12時間もかかり
磔磔に到着。
すでにイベントは始まっていて、僕らは速攻機材を運び込み、大急ぎでライブ準備を始める。
ヘルプしてくれたゆーきゃん、サンキューありがとう。
僕らはフロア後ろのバックステージ(勝手に命名)で7人ギュウギュウになって演奏、
ステージ上にいるキャスパー達に、エールに似た演奏を送る。
それがどれだけ伝わったかは分かんないが、見事にそれに答えてくれたキャスパーの
ナイスライブでした。
THE WHOのカヴァー、「I’m a boy」も冴えてたな。

ライブが終わったあとも大勢のお客さんが残ってて、ライブの余韻を楽しんでる様。
12時間のドライブの疲労と焦りで逆に燃えた、僕らとキャスパーの京都ライブでした。

10日はホテルをチェックアウト後、みんなで清水寺へゴー。
修学旅行以来の清水寺。でも当時のことは何も覚えていないので、初めて来たに近い感覚。
僕はライブで地方に行っても、観光にはあんまり興味が沸かないんだけど、この日は超観光客。
キャスパー達と一緒に「OH~!」とか言って、積極的に写真撮影の輪に参加しました。
そしてこの日はとても気持ちがいい晴天。
前日に降った雪が風情をよりいっそう演出。土産物や八つ橋や団子を食べてたりして
いる内に予定時間をオーバー、名古屋入りが遅れる。

鶴舞 K.D japonでも、ライブ終了はお客さんが大勢残ってライブの余韻を楽しんでいる様子。
物販を吟味する人、キャスパー達と話したりサインを貰ったりする人、みんなそれぞれとても楽しそう。
今回のツアー各地でそうだったけど、いいライブが終わった後って、フロアがすげーいい
雰囲気に包まれてるね。僕らの満足感もあるのかもしれないけど。
ElekiのライブはK.D japonの雰囲気にとてもマッチングしたライブだった気がするな。
キャスパーのアンコールでは座ってたお客さんが立ち上がって踊りだしたり。

東京へ帰るためK.D japonを後にし、名古屋インター東名高速の入り口付近で、
「高速道路で火事が発生したため、迂回してください」
とのこと。
高速で火事?事故?雪の次は火事なの?って具合で名古屋出発が予定より大幅に
遅れる。
名古屋に行くときは何かが起こる。ちなみに前回は大雨、高速道路の入り口間違い、などなど。
名古屋はとてもスリリング。

結局、朝の8時頃に帰宅。
深く、短い睡眠をとってツアー最終日を迎える。
最終日!ってことで僕らもキャスパーも気合いが入り、その気合が空回り作用した
瞬間も、逆に相乗効果を生んだ瞬間もあり。
楽しい瞬間とドキッ!とする瞬間が入り乱れる、スリリングなステージ。
ステージから見えたお客さんの笑顔がとても印象的だったな。

アンコールでtotosを加えたみんなで歌った曲は、ダニエル・ジョンストンの
「Rock this town」って曲でした。
この曲は、アメリカで僕らとキャスパーが、当の本人ダニエル・ジョンストンと一緒に
歌った曲。
この曲を最後にやるなんて聞かされてなかったが、(でも本番前のサウンドチェックで
キャスパーが演奏してたから、うすうす感じてはいたが)、そんなのノープロブレム、
余計な打ち合わせなんていらないぜ!
ってポジティブな意気込みで挑みました。

今回のツアーを観に来てくれた方、サンキューどうもありがとう。
楽しんで貰えたと願ってます。
僕らはキャスパー達と過ごした毎日がとても楽しく、彼らとのライブは刺激的で
スリリングで、とても充実した1週間を過ごしました。
やっぱ、同じ感覚というか価値観というか、言葉は片言でも音楽だけで分かり合える
仲間と一緒にツアーするのは、やっぱ楽しい。
なんかこう、エネルギーのギブ&テイクとでもいうか。

まあなにはともあれ、大好きなバンドです。
アメリカでも日本でも、それ以外の国でも、また一緒にツアーできることを祈りつつ。
書きたいことはまだあるけど長くなってきたのでこの辺で。

キャスパーたち、そろそろ家に着く頃かな?

Casper & the Cookies - Neo Dada Heyday

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with Casper & The Cookies JAPAN tour

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つーわけで、日付が変わった今日、キャスパー&ザ クッキーズが来日!

たぶん今頃、飛行機の中。何してんのかな?寝てんのかな?食事中かもね。
機内食って、出されたら食べざるをえない。
腹が減っていなくても、好みのメニューじゃなくても。

「ありがとう。でも後でいいよ。」

って言う勇気がない。
飛行機の中に13時間も座ってると、気分転換がしたくてたまらない。
そんときの機内食は、まあ、いい気分転換にはなるけどね。

キャスパーたちは成田空港じゃなくて、なぜが名古屋空港に到着する予定。
「NAGOYA」を「NARITA」と間違えたのか?

ボーカルのジェイソン、ベースのケイは、2回目の来日。
ギターのジム、ドラムのジョーは初来日。
僕もそうだったけど、「初めての土地」ってどんなだろう?ってドキドキするね。
アメリカ大陸から出たことがないあの2人。今頃飛行機の中でドキドキしてんのかな。

アメリカの片田舎出身の彼ら。
東京のイメージを聞いてみると、「たとえば、ニューヨークは「モンスター」ってかんじだけど、東京は「別惑星」ってイメージかな。」

東京は、大気圏を越えてさらに向こうにある街とイメージしてるらしい。
映画「Lost in Translation」 も、そんなイメージを持った理由のひとつ、とのこと。

まあたしかに、ニューヨークはモンスター。
建物が「そびえ立ってる!」ってかんじ。
帰国して新宿の街並みを眺めてると、なんだか小さな街に思えた。

世界地図上で、アメリカから見れば「異国」と呼ぶにはふさわしい位置にある日本。
無事到着しますように。

そして、8日から僕らとキャスパーのJAPANツアーがスタート。
7日はツアー前夜祭みたいな形で、ウェルカムパーティーを催す予定。
ウェルカムパーティーだけど、さっそくキャスパーたちに軽く演奏して貰います。
僕らはそれを楽しむ予定。

そんなわけで、このツアーを見に来る予定の方は、お楽しみにね。
行くか決めかねてる方は、ぜひ見に来てね。
行かない方は、とりあえず邪魔にならない程度に頭の片隅に名前だけでも。

僕らみたいなのは、人に見て聞いて貰わないと、興味を持って貰わないと、
存在価値が無いちょっと残念な人種。
知らない土地で、知らない人達の前で、わざわざ海を渡って音楽をやりにくる、
普通の感覚を持った人からすれば、ちょっとクレイジーなカテゴリーに分けられる。

でも、知らない人達を熱狂させたときは、最高に気持ちいい。
必ずお客さんが熱狂する保証はないけれど、それがまたスリリング。

そういえば、あんなに待ちに待った日はなかった。

こないだの大相撲初場所、千秋楽。
僕は何気にテレビで大相撲を見てるが、(録画版のほう。「幕内全取り組み」のほう。)
白鵬は、すっかり横綱の風格が出てきた。大関のときとは、オーラが違う。
そして時の人、朝青龍。
いやー、かっこいいよね朝青龍。漫画にでも出てきそうな、「ザッツ横綱!」的なキャラと強さ。
千秋楽での2人の取り組みは、まさに大相撲!ってかんじ。
力と力がぶつかった戦いだったね。
あの2人が現役のうちに、1回生で見に行きたい。

もし僕が朝青龍と友達だったら、キャスパーたちに会わせたい。
デカイのはアメリカ人だけじゃないぜ!ってとこを見せてやりたい。(モンゴル人だが。)

「心・技・体」を英語で説明するのは難しい。
アメリカのレストランに番付表が張ってあって、「What is this ?」と聞かれたから最初は何とか説明しようと頑張ったけど、途中で面倒くさくなりギブアップした。

ちなみに、キャスパーたちは、曙も武蔵丸も知らなかった。
高見山なんて、まず知らないだろう。高見盛は負けても面白いね。

つーわけで、話がそれるほど楽しみな今回のツアー。
大勢の人達に見て、聞いて、知ってもらえればいいなと思ってます。
番付け表を、心・技・体を英語で説明できれば、英語力はそこそこあるんじゃないかと
思う今日この頃。

来日特設HP

 

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The Optimist's Club

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待てど来ず。

後部座席から聞こえてきた鼻にかかったハミング、ジェフ・ハンソンのメロディ。
あてもなく、行き当たりばったりでさまよったウィーンの街。

あのとき彼が、無茶で意味不明なドリンクをオーダーし、
その隙に僕がこっそりワイングラスを盗んだバーカウンター。

今僕は、そのバーカウンターでLLサイズのジンジャーエールを持て余している。
換気孔からなだれ込んできた午後の日差しは頭上のミラーボールに反射して、
予想外の角度から僕の視界に入り込む。
そして僕はその光を遮るように、手をかざす。

あれから8年の月日が流れた。
僕は毎年飽きずに、遅めの夏休みをスペインで過ごしている。
帰国する際はやはり、特急列車に乗りフランス経由で空港へ。
あの日の影響か、僕は気が向いた国で途中下車するようになった。
去年はドイツでフランクフルトを食べながら F・S・Blumm のライブを見て、
一昨年はフィンランドまで行き、湖みたいな温泉に夜が明けるまでつかった。
その帰りの車内では爆睡してしまい、あやうくシベリア鉄道に乗り入れるところだった。

そして今年は、アメリカで降りた。
帰宅するために乗った飛行機だったが、大西洋上空辺りで途中下車癖がうずき、
降りた先の空港は、ジョージア州アトランタ空港。

空港を出て、真っ先に目に入ったカフェに入り、コーヒーとシナモンロールを
テイクアウトする。
しばらくアトランタの街をぶらぶら歩き、通りすがりの老人に
「どこかいいライブハウスを知らないか?」
と尋ねてみた。

「アセンズって街の40Wattがいい。行ってみな。」

老人は吐いて捨てるように言い残し、歩き去っていく。
無愛想だが悪い人じゃなさそうだ。
僕はタクシーを呼びとめ、アセンズという街へ向かった。


40Watt内のバーカウンターで、僕は多すぎるミネラル・ウォーターを持て余す。
換気孔からなだれ込んできた午後の日差しは頭上のミラーボールに反射して、
予想外の角度から僕の視界に入り込む。
そして僕はその光を遮るように、手をかざす。

40Watt内には、まだスタッフしかいないようだった。
オープンしているのかも、定かじゃない。勝手に入ってきた僕を怪しむ暇もないように、
皆あっちへこっちへ忙しそうに働いている。
店内には、まだBGMすら流れていない。

ふとバーカウンターの奥に目をやると、薄いピンクのネクタイ、黒ブチメガネを
かけた栗毛の男が、カウンターであくせく働く店員に話しかけている。

「ねえ、君。君をこのライブハウスでいちばんのDJ と見込んで、頼みがあるんだ。」

「DJ は趣味程度な僕ですが。あなたのお力になります。」

「音楽が流れてないライブハウスって、どう思う?まるで腐った肉か、
開かないパラシュートだ。どちらもあの世行きだね。何かこう、イカした音楽を
かけてくんないかな。そうだな、テーマは「お化けとクッキー」がいい。
お化けの目はパッチリとした二重で、ちっちゃなえくぼが魅力的。大学を卒業後は
国際ミドリ十字に就職して水質汚染に苦しむ何百万もの人を助けるため、発展途上国で水処理事業に参加しながら、夜はクッキーをこっそり枕元に置くいたずらをしてる。
趣味は社交ダンスとヨガを少々。「子供は多すぎない程度で。」と希望している。
そんなハッピーなやつ、かけてくれよ。」

唖然とする店員。とりあえずCD棚に目を向けてみる。
今にも泣きそうな顔をしたその店員は、店長に相談しに行った。

しばらくして、店の奥から店長らしき男が出てきた。
70歳くらいだろうか。ムスッとした表情の老人。
その店長の背後には、さっきの店員。

「The Optimist's Club に行きな。キャスパー&ザ クッキーズってバンドがいる。」

老店長はそういい残し、店の奥へと消えていった。

「・・・。なんだあのジイさん・・・。そのなんとかクラブって、ライブハウスなのか?」

「さあ・・。言葉足らずな上に無愛想ときてるから、よく誤解されるんですよ。悪い人じゃないんですけどね。まあ、必ず街に1人はいる頑固な爺さんですよ。」

と話している矢先に、老店長が再び奥からやってきた。
ぎょっ、とする彼ら。
老店長は店員のポケットにメモらしき紙を押し込み、何も言わず奥へと消えていく。

「・・・。」

老店長の後ろ姿を無言で眺める店員と黒縁メガネの男と、僕。
店員はくしゃくしゃになったメモを取り出し、読んでみる。

「まったく・・・。ほんと人見知りなんだから。そんじゃ僕が店長の代わりに
読みますね。こう書いてます。」

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「The Optimist's Club のキャスパー&ザ クッキーズ」

ビートルズやビーチボーイズの実験性に魅了され、
ロックパイルやエルビス・コステロを彷彿させるメロディセンスを持ち、
XTCのようなニューウェーブ・ダンススタイルを取り入れ、
テレビジョンのようにシンプルで尖ったギターリフで押し迫る。
他には類を見ない、アメリカのインディーパワーポップバンド。

ボーカルのジェイソン・ネスミスは、クラシックやジャズにまで
興味を持つ特異な音楽性を持ち、モンティ・パイソンにでも出てきそうな
「舞台俳優」的ルックス。彼の奥さんは、同バンドのベーシストである
ケイ・ステーション。彼女がリードボーカルを取る「Krotenwanderung」は、
Optimist's Clubを代表するクールでイカした曲。

ギターのジム・ヒックスは左右に立派なもみあげをたくわえた、
ちょいエルビス・プレスリー的な風貌。彼のギターアクションは
アメリカン!的な派手さ。しかし彼のスゴイところは、派手な
アクションの中でも繊細なギタープレイが出来るところ。
彼が叩くタンバリン姿は超必見。

ジョー・ロウのドラムはタイトにして時に大胆&歌心がある。
彼のハイハットさばきは要注目。ピンクのかつらもよく似合う。
時々、マイクを持って彼がリードボーカルをとる曲もあり。

追伸 : 参考までに、Optimist's Clubの外観の写真でも。

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「以上です。こんなに長々と書くんだったら、話したほうが早いのに。」

「いや、どうやら見た方が早そうだ。サンキュー店員くん。ほんとはこれから
日本に行く予定なんだけど、フライトまでまだ時間はあるな。
早速その「The Optimist's Club」に行くことにするよ。」

彼はチップをカウンターに置き、席を立つ。

「じゃあね。いろいろありがとう。あの店長にもよろしく伝えといて。」

「はい。また来てくださいね。ああ見えて、店長はこの街いちばんの
DJ なんですよ。」


彼は40Wattから出て行った。
その後ろ姿を眺める僕。
すると僕の途中下車癖は、僕を Optimist's Club へと向かわせた。

僕はOptimist's Clubのバーカウンターに座り、キャスパー&ザ クッキーズのライブを
見ながら、LLサイズのストレンジでポップな音楽に酔いしれた。
黒縁メガネの彼は、フロアの前方で楽しそうに踊っている。
日本行きのフライト時間は、もうとっくに過ぎていた。


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イースの都からハープの調べ

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Joanna Newsom
「Ys」。
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先日、靴下を2足買った。
その店内で流れていたのが、これ。
靴下を選びながら聞いてたときは、戦前の舞台歌手か何かの、古いレコードかと
思った。
「これ、誰ですか?」
と店員の人に聞いてみると、彼女はiTunesを操り、「ジョアンナ・ニューサムって人です。」
「ふ~ん、昔の人なんですか?」
「さあ・・・。でも有名な人ですよ」
って僕との会話。彼女はアーティスト名とアルバム名をメモに書いてくれた。

その何日かあと、CD屋さんでこのアルバムを探してみる。
「舞台歌手、もしくはジャズシンガー」と勝手に思い込んでいた僕は、貰ったメモを頼りに
とりあえずジャズコーナーを探すが、置いてない。
ダメもとで、下の階のロック/ポップスコーナーへ。
そこで、「Joanna・・・」コーナーを見つけた。
しかしそのタブには、「Joanna作品は「New Age」コーナーに置いてます!」と
書かれていたので、僕は再びエスカレーターで上の階へ。

「New Age」コーナーって何?
って思いながら、CDの陳列を見ると、ポストロックや現代音楽、モンドものなど。
アニマルコレクティブや、ジム・オルークなどなど。パスカル・コムラードも置いてある。
こんなコーナーがあるなんて知らなかった。
そして僕が探していたJoannaも、このコーナーに面出しで置いてあった。

「戦前の人」と思っていた彼女の最新作は、2006年シカゴのレーベル「Drag City」からのリリース。
「えっ、ドラッグシティから出してた人なの?!」と僕はビックリ。
プロデュースとアレンジはヴァン・ダイク・パークス、ハープと歌の録音はスティーブ・アルビニ、(彼女はハープ弾き語りシンガー。) そしてミックスはジム・オルーク。
彼女はファーストアルバムで脚光を浴び、セカンドアルバムではこのラインナップ。

つーわけで、みんな戦後生まれのアーティストでした・
彼女が弾くハープに加え、バレリーナの踊りにでも合いそうなオーケストラアレンジ。
5曲で55分。歌詞は不思議な物語調。なんだか、物語に曲を付けたみたいな、アルバム。

僕が靴下を買ったお店は、店内に陳列されてた商品も内装も、店員の女の子の服装も
ふくめ、少しアンティークチックな雰囲気。
そして店内のスピーカーにはかすかにノイズがのっていて、まるで蓄音機で流しているようなサウンド。
そんなナイス雰囲気に流されて買った靴下と、ジョアンナ・ニューサム。

もうちょっと書こう。

このお店を出たあと、喉が渇いた僕は、近くのスタバへ。
スタバカードを貰って以来、最近たまに行くようになった。
コンパナを注文する。すると店員の人が、
「コンパナお好きですか?オススメのトッピングがあるのですが、よかったらいかがですか?」
とのことで、そのおすすめコンパナを1杯サービスして貰う。

うん、なかなか美味しい。
僕は、「これ、注文するときなんて頼めばいいんですか?」
と聞くと、
「コンパナシングルに、キャラメルソース。そしてバニラシロップをワンポンプ!
この「ワンポンプ」がポイントですが、量はお好みで!」
と丁寧に教えてくれた。が、注文するときにここまで言うのは、ちょい面倒かも。
プロデューサーは誰々、ミックスはかれこれでアレンジは云々・・・的。

「いつもの、あの雰囲気を。」
って、言ってみたい。


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