ドレスデンからの電話
WHY? のニューシングル。
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ドイツはドレスデン、今日はどんより曇天模様。
ビルの谷間に続く細い路地を歩き、所々に残る空爆の跡に目をやる。
街角の公衆電話に入り、壁に貼り付けてある広告を適当に選び、
何となしにダイヤルを回してみる。
電話に出た相手は、ニール・ヤングとスティービー・ワンダーを足したような、
鼻にかかった声。
「はい、ローズウォーター財団です。なにかお力になれることは?」
おや、どうやらどこかの慈善事業団体につながったようだ。
「やあどうも。こちらはドレスデンの電話ボックスです。空はあいにくの曇り空ですが、
街も人もようやく元気を取り戻し、皆の心は晴れやかなようですよ。」
「あなた、どちらさん?XTCが好きなドレスデンの市長ですか?」
「いえ、ただの通りすがりです。」
「そうでしたか、それはさぞ、楽しい時間を過ごされてるんでしょう。
ところで、なにかあなたのお力になれることは?」
「最近よく明太子スパを作るのですが、毎回どうも、明太子だけが余るんです。スパとの分量バランスに失敗するんです。それが腑に落ちません。あとついでに、横審とか
何とか防止委員会って団体も腑に落ちません。」
「はあ・・・。一体なぜ?」
「余った明太子がもったいないと思いませんか?また、彼らは一体何を望んでいるのですか?」
「それじゃあ、最初から明太子ソースは少なめに作ればいいのでは?そして、老人が
ものを言う世界は古代ローマから続く歴史なのです。そういうものなんです。
So it Goes。」
「ああ、なるほど。そんじゃ次回は明太子の量を半分にします。召されるのを
願います。」
「よろしくお願いします。」
「あともう一点、いいでしょうか。」
「あなたのお力になります。」
「人生が生きることなら、人はなぜ、生きるのですか?」
「まるで落ちた薔薇のように、はかない悩みですね。遠くに行きなさい。オクラホマに
行きなさい。そしてヨ・ラ・テンゴにオクラホマUSAでも歌ってもらいなさい。もしくは、
田名網敬一がデザインしたTシャツでも着なさい。そしたら幾分、気分も晴れるでしょう。」
「そうですね、そうします。そろそろドレスデンを発つことにします。コインも底をつきそうだ。」
「いい旅を。あなたに神のお恵みを。」
「あっ、最後にもうひとつ、なぜ、僕はレコードを買ってしまうのでしょう?」
「それは、そういうものです。So it ・・・」
ガシャン!ツー、ツー、ツーーー・・・。
コイン切れ。
電話ボックスを出た僕は、オクラホマへと旅立つため、とりあえず駅の方向を
通りすがりの老人に尋ねることにした。
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